その町の名は?×世界忘却系×ハルヒの憂鬱




ラファティの記事を、また書きたくなったので
今日はラファティについて書きます。画像は大昔にフォトショップで作成しました。
ラファティ氏への追悼のオマージュ作品デス。泥棒熊クン。光学迷彩ちっくな
カンジです。昨日の蝶も光学迷彩だったのですねぇ。どんな危ない夢を見ていたのか
知らないケド、どこの国のスパイ蝶だっ?!(え


【九百人のお祖母さん】 R.A. ラファティ
から、今日は短編「その町の名は?」(1964/10)を取り上げてみます。


これをまた読むのは、実に10何年ぶり・・・こんな話です・・・
グレゴリー・スミルノフは、彼が主宰する<研究所>で、
「ふざけた機械」ことエピクティステスに次のような命令を下した。


【命令1】
「われわれは、その存在が知られていないあるものを、証拠の不在を綿密に検討することによって、
発見しなくてはならない。」


「わしは、自分が忘れるように強制したなにかを、思い出そうとつとめている気がしてならないんだ」
・・・とのこと。ははー、漠然とした研究ですねぇ^^;


次いで、またエピクティステスに次の追加命令を下します。


【命令2】
「そういう概念そのものが完全に消去されているようななにものかを、再構成できるか試して
みようじゃないか。それが決して存在しなかったという過大な証拠を検討して、それを
見つけられないかどうか、試してみようじゃないか。」


こうして、「ふざけた機械」のエピクティステスは、Googleよろしく、トイレの落書きから
TVCM、子供の間ではやった遊び歌・・・などなど、とにかくいろんなものを
かき集めて、一つの答えを作り上げたのでした。
以下ネタバレ。










































エピクトは次のように語りだした。
「では、本題に入ります。1980年のこと、アメリカ中部最大の都市がある人為的な災害によって破壊されました。」
「大都市圏に住む七百万の住民が七秒たらずで全滅したこの事件は、人間的観点からするときわめて悲惨なものでした。
・・・考えると、わたしもそのときいささかショックを味わったことを思い出します。この事件はあまりにも恐ろしい
ものであったため、すべてを秘密にして、気持ちよく忘れてしまおうという政策が決定されたのです。」
「非常にむずかしいことでした」
「にもかかわらず、それは二十時間で完全になしとげられたのです。それ以来、この瞬間にいたるまで、だれひとり
そのことを思い出したり、考えたりするものはありません。」


・・・エピクトによると、このようなことらしい。
ある大科学者が発明した装置・・・万有記録遠隔歪曲機(テレバントグラフィック・ディストーダー)により、その町に
関連するありとあらゆる記録や記憶・・・・・・が抹消され、放送電波や電磁波などにより、世界的健忘症が誘発され
それを逃れたものは、ごく少数でしかない、という。そしてエピクトは、その機械を発明したのは、
グレゴリー・スミルノフ、あなた自身だと付け加えた。


「冗談もたいがいにしろよ、エピクト!おつむを疑われるぞ!」
「きみはほれぼれするようなホラ吹き機械だ。諸君、この機械はハチャメチャだ!」
スミルノフをはじめ研究所の仲間たちは、ほら吹きのエピクトが冗談を言っていると取り合わない。
スミルノフにいたっては、「やつが仕事のストレスから気分を解放したいのはわかるが、ユーモアと冗談の度がすぎる」
「わしは少々失望したよ」
といった始末である。


しかし、エピクトはかまわず続ける。


万有記録遠隔歪曲機は、現在は使用されていないが、まだ<研究所>に存在していて
「あなた(スミルノフ)は日に十回もそれにつまづいて、”あのくそいまいましい鉄くずの山め”と悪態をつきます。
しかし、あなたには、一つの記憶障害があるため、その機械の正体を思い出せないのです。」
・・・
「みなさん、あなたがたの上には一つの幕が降りてきました。」
「みなさんはふたたび忘れるのです・・・わたしの冗談も、その町の奇妙な名前さえも。そして、ご念の入ったことに、
わたしもまたそれを忘れるのです」


こうして、その町に関するすべてが消去されたのであった。
うーん、その町の名前はなんであったか・・・。忘れてしまった。
このような世界的健忘症の話は、○○系などと、どのように呼ばれるか、残念ながら私は知らないのですが・・・
さて、ここからが本題です。
このような世界が忘れていて私だけが知っているのだ!的お話を世界忘却系の話と勝手に名づけます。
そうすると、最近この世界忘却系の話を、どこかで読んだか、見たか・・・・したような微妙な既視感があるのです。
まぁ、面白いアイディアなので、いくつもの作品やドラマ、コミックなどに出てきていてもおかしくはない。
しばらく既視感と戦い、ようやくもやもやしたものから、答えを見つけました。
・・・そういえば、ハルヒの憂鬱の中に、この世界忘却系の話が出てきたなぁ。長門有希が世界をアレしてしまう
話ですよ。はたして原作者の意識に、ラファティへのオマージュがあったのかは不明ですけど、ネットでいろいろみかける
長門有希の100冊」に入ってないので、あれれ〜ってカンジですねぇ。しかし、名だたるハヤカワ書房の
ベストSFが入っていることからして・・・・略。
で、狭義の世界忘却系の定義をもうちょっと詳しく規定すると、きまぐれ☆オレンジロードパラレルワールド
的な話があったと思うけど、あれはこの狭義の世界忘却系には入りません。平行世界や時間旅行・・・などなど、
その世界の外側からやって来た人間について世界(=自分)忘却系を指すのではなく、ここでは、上記エピクト
が膨大な資料の中から、ワレワレの世界で起こったが、何かの原因や事件により全世界がその存在を
忘却してしまっているようなことがらを、ちょいと奥さん、おいらこんなの調べてきたのですが・・・
というのを、狭義の世界忘却系と命名します。
資料がないので、なんとも言えないのですが、世界忘却系な話には他にどんなのがあるでしょう?
牧野修氏がSFマガジンで「電波大戦」って作品を書いていて、毒電波でいっぱいな話でした。
毒電波(=妄想)を世界忘却系に入れるかどうかは、微妙ですねぇ。
リリミア嬢とか、こういうジャンルが得意そうだなぁ・・・。もちろんいい意味ですよ^^;
http://www009.upp.so-net.ne.jp/zairrin/


【追記】
世界忘却系なんてジャンルは、非常にレア・・・
なんというか、それはセカイ系に属するような気がします・・・。
セカイ系
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AB%E3%82%A4%E7%B3%BB